生理活性物質測定事件(最高裁平成11年7月16日第二小法廷判決)

概要

本判決は

①発明のカテゴリ(物、物を生産する方法、方法)の判断方法

②方法の発明の効力

③特許法100条2項にいう「侵害の予防に必要な行為」について

判示した。


事案

X:測定方法「生理活性物質測定法」の特許権者

Y:薬の品質規格の検定のため当該方法を実施

XがYに対し①薬の製造、販売、広告の差止、②薬の破棄、③薬価基準申請の取り下げ、④製造承認の取り下げ申請及び製造承認によって得ている地位の第三者への承継、譲渡の禁止を請求した。


裁判所の判断

第一審(大阪地裁)

Yが製造過程における品質確認方法として本件方法を使用しているとはいえないとしてXの請求を棄却


控訴審(大阪高裁)

製造作業と不即不離の関係で方法を使用しているとして、方法の発明であると認めながらも、物を生産する方法の特許権と同様の効果を認め、Xの請求を認めた。


最高裁

①発明の種類の判断方法について

発明の種類を「願書に添付した明細書の特許請求の範囲」の記載に基づいて判定すべきものである(特許法70条1項)とし、本発明は「物を生産する方法の発明」ではなく「方法の発明」であるとした。

②単純な方法の発明の特許権の効力について

本件発明は「物を生産する方法の発明」ではないから、薬の製造工程において、本件方法を使用して品質規格の検定のための確認試験をしているとしても、その製造およびその後の販売を、本件特許権を侵害する行為に当たるということはできないとした。

③特許法100条2項にいう「侵害の予防に必要な行為」について

特許法100条2項が、…侵害の予防に必要な行為として、侵害の行為を組成した物…の廃棄と侵害の行為に供した設備の除却を例示しているところからすれば、同項にいう『侵害の予防に必要な行為』とは、①特許発明の内容、②現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様、及び③特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、④それが差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要するとし、本件方法の使用の差止めを請求することができるにとどまることに照らし、薬の廃棄及び…薬価基準申請の取下げは、差止請求権の実現のために必要な範囲を超えると判断した。


参考文献:別冊Jurist No.244 August 2019 特許判例百選 第5版 p.4~7

以下裁判所ページより引用

判示事項

一 方法の発明に係る特許権に基づき当該方法を使用して品質規格を検定した物の製造販売の差止めを請求することの可否

二 特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」の意義

三 医薬品の品質規格の確認試験においてする方法の使用が特許権を侵害する場合において右医薬品の廃棄及びこれについての薬価基準収載申請の取下げが特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」に当たらないとされた事例


裁判要旨

一 方法の発明に係る特許権に基づき、当該方法を使用して品質規格を検定した物の製造販売の差止めを請求することはできない。

二 特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」は、特許発明の内容、現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様、特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要する。

三 方法の発明に係る特許権を侵害する行為が医薬品の品質規格の検定のための確認試験において当該方法を使用する行為であって、侵害差止請求としては当該方法の使用の差止めを請求することができるにとどまるという事情の下においては、右医薬品の廃棄及びこれについての薬価基準収載申請の取下げは、差止請求権の実現のために必要な範囲を超えるものであって、特許法一〇〇条二項にいう「侵害の予防に必要な行為」に当たらない。


参照法条

特許法2条3項,特許法68条,特許法100条1項,特許法100条2項,健康保険法43条の9第2項,平成10年厚生省告示第30号(使用薬剤の購入価格(薬価基準))

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