端面加工装置事件(東京地裁平成25年10月31日判決)

 概要

本判決は特許請求の範囲が具体的な構成ではなく、その構成が果たす機能として抽象的に記載されたクレーム(機能的クレーム)における特許請求の範囲の解釈について判示した。


事案

X:発明名称「端面加工装置」の特許権者

Y:被疑侵害品を製造および貸渡し

XがY製品の製造、貸渡しの差止め

被疑侵害品が 構成要件E バリ除去用工具とそれを回転する回転機構を覆う「円筒状のフード部は金属粉収集機構を有して」いる を充足しているかが争点

裁判所の判断

第一審(大阪地裁)

Yが製造過程における品質確認方法として本件方法を使用しているとはいえないとしてXの請求を棄却


控訴審(大阪高裁)

製造作業と不即不離の関係で方法を使用しているとして、方法の発明であると認めながらも、物を生産する方法の特許権と同様の効果を認め、Xの請求を認めた。


最高裁

①発明の種類の判断方法について

発明の種類を「願書に添付した明細書の特許請求の範囲」の記載に基づいて判定すべきものである(特許法70条1項)とし、本発明は「物を生産する方法の発明」ではなく「方法の発明」であるとした。

②単純な方法の発明の特許権の効力について

本件発明は「物を生産する方法の発明」ではないから、薬の製造工程において、本件方法を使用して品質規格の検定のための確認試験をしているとしても、その製造およびその後の販売を、本件特許権を侵害する行為に当たるということはできないとした。

③特許法100条2項にいう「侵害の予防に必要な行為」について

特許法100条2項が、…侵害の予防に必要な行為として、侵害の行為を組成した物…の廃棄と侵害の行為に供した設備の除却を例示しているところからすれば、同項にいう『侵害の予防に必要な行為』とは、①特許発明の内容、②現に行われ又は将来行われるおそれがある侵害行為の態様、及び③特許権者が行使する差止請求権の具体的内容等に照らし、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、④それが差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要するとし、本件方法の使用の差止めを請求することができるにとどまることに照らし、薬の廃棄及び…薬価基準申請の取下げは、差止請求権の実現のために必要な範囲を超えると判断した。


参考文献:別冊Jurist No.244 August 2019 特許判例百選 第5版 p.12~13

裁判所ページ

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