弦楽器のチューニングタイプ考察

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弦楽器のチューニングには様々な種類があります。
たとえ同じ楽器でもチューニングの種類を変えることで、楽器としての性格が変わることが知られており、これは大変興味深いことだと思います。
様々なチューニングタイプを比較して、音楽への理解を深めたいと思います。
私が強く興味を持つ、弦が4本以下の弦楽器に関することが中心を占めますのでご承知おきください。

先ずは様々な楽器のチューニングタイプリストを挙げておきます。
開放弦のピッチと、隣り合う弦のピッチがセミトーン(半音)何個分離れているかを記載しています。

・ウクレレ
スタンダードHigh-G
G4(-7)C4(+4)E4(+5)A4

スタンダードLow-G
G3(+5)C4(+4)E4(+5)A4

Dチューニング
A4(-7)D4(+4)F#(+5)B4

バリトンチューニング
D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

・ヴァイオリン族
ヴァイオリン
G3(+7)D4(+7)A4(+7)E5

ヴィオラ
C3(+7)G3(+7)D4(+7)A4

チェロ
C2(+7)G2(+7)D3(+7)A3

コントラバス
E1(+5)A1(+5)D2(+5)G2

・ギター
6弦ギター
E2(+5)A2(+5)D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

7弦ギター
スタンダード
B1(+5)E2(+5)A2(+5)D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4
スタンダード+↓A
A1(+7)E2(+5)A2(+5)D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

8弦ギター
F#1(+5)B1(+5)E2(+5)A2(+5)D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

9弦ギター
C#1(+5)F#1(+5)B1(+5)E2(+5)A2(+5)D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

ギタレレ
A2(+5)D3(+5)G3(+5)C4(+4)E4(+5)A4

4弦ギター
テナーチューニング
C3(+7)G3(+7)D4(+7)A4

アイリッシュチューニング・オクターブマンドリンチューニング
G2(+7)D3(+7)A3(+7)E4

シカゴチューニング
D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

ベース系
4弦ベース
E1(+5)A1(+5)D2(+5)G2

5弦ベース
B0(+5)E1(+5)A1(+5)D2(+5)G2

6弦ベース
B0(+5)E1(+5)A1(+5)D2(+5)G2(+5)C3

バンジョー系
6弦ギターバンジョー
多分ギターと同じ

5弦バンジョー
オープンGチューニング
g4(-17)D3(+5)G3(+4)B3(+3)D4

ダブルCチューニング
g4(-19)C3(+7)G3(+5)C4(+2)D4

Cチューニング
g4(-17)D3(+5)G3(+4)B3(+3)D4

Dチューニング
f#4(-16)D3(+4)F#3(+3)A3(+5)D4

Gモダルチューニング
g4(-17)D3(+5)G3(+5)C4(+2)D4


・4弦バンジョー
トラディショナルテナーチューニング
C3(+7)G3(+7)D4(+7)A4

アイリッシュテナーチューニング
G2(+7)D3(+7)A3(+7)E4

シカゴチューニング
D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

プレクトラムチューニング
C3(+7)G3(+4)B3(+3)D4

JAZZ用アルトチューニング?
D3(+7)A3(+7)E4(+7)B4


・マンドリン
G2(+7)D3(+7)A3(+7)E4



ウクレレチューニング比較

■ウクレレのチューニングタイプ一覧
①スタンダードチューニング
(小さいサイズのウクレレで最も一般的)
G4(-7)C4(+4)E4(+5)A4

②スタンダードLow-Gチューニング
(①のGを1オクターブ低くした・ソロ演奏で人気)
G3(+5)C4(+4)E4(+5)A4

③Dチューニング
(①を半音2つ低くした・昔はこちらが一般的)
A4(-7)D4(+4)F#(+5)B4

④バリトンチューニング
(②を半音5つ低くした・大きなサイズのウクレレで一般的)
D3(+5)G3(+4)B3(+5)E4

■ウクレレチューニングタイプの考察
①スタンダードHigh-Gチューニングは
4弦→3弦は5セミトーン上げて1オクターブ(12セミトーン)下げる(G4→C4)
3弦→2弦は4セミトーン上げ(C4→E4)
2弦→1弦は5セミトーン上げ(E4→A4)

②スタンダードLow-Gチューニング
4弦→3弦は5セミトーン上げ(G3→C4)
3弦→2弦は4セミトーン上げ(C4→E4)
2弦→1弦は5セミトーン上げ(E4→A4)

③Dチューニング
4弦→3弦は5セミトーン上げて1オクターブ(12セミトーン)下げる(A4→D4)
3弦→2弦は4セミトーン上げ(D4→F#4)
2弦→1弦は5セミトーン上げ(F#4→B4)

④バリトンチューニング
4弦→3弦は5セミトーン上げ(D3→G3)
3弦→2弦は4セミトーン上げ(G3→B3)
2弦→1弦は5セミトーン上げ(B3→E4)
という関係になっていることが分かります。

・どのチューニングでも本質的には同じ
上記関係を見て分かる通り、各弦の関係はほとんど同じなので、同じポジションを押さえてなる音のキーが変わるだけで、楽器の演奏方法に大きな影響を与えるような大きな違いは無いことが分かります。
スタンダードチューニングのウクレレに慣れた方が、バリトンチューニングやDチューニングのウクレレを普段の指使いのまま弾くと、全体的に低い音になるだけで大した違和感なく弾くことができると思います。
当然、キーが変わるので、同じコードを鳴らすために押さえるポジションは変わります。
結果的に弾きやすいコードも変わります。

・4弦のピッチで二種類に分けられる
ところで、上記各弦の関係を見ると、①③だけ4弦がオクターブハイピッチになっていることが分かります。このことから①③をハイピッチ4弦チューニング、②④をローピッチ4弦チューニングに分類することができます。

それではハイピッチ4弦チューニングとローピッチ4弦チューニングの違いによってもたらされる3つの効果を見てみましょう。
比較を簡単にするために、ここでは①スタンダードHigh-Gチューニングと②スタンダードLow-Gチューニングを比較します。

1つ目の違いは、Low-Gチューニングでは4本の弦の中で4弦が最低ピッチ・1弦が最高ピッチになっているのに対し、High-Gチューニングでは4弦と1弦がどちらもハイピッチになっていることです。
これにより、
Low-Gチューニングでストロークプレイをする場合、
ダウンストロークでは低音→中音→中高音→高音
アップストロークでは高音→中高音→中音→低音
という様に明らかにアップとダウンで異なる順でノートが鳴るのに対して、
High-Gチューニングでは、
ダウンストロークでは高音→中音→中高音→高音
アップストロークでも高音→中高音→中温→高音
と、常に最初と最後のノートが高音になるという違いが生まれます。
この、ストロークプレイの最初と最後が高音であるという点が、ウクレレの大きな特徴であるといえるでしょう。
逆にLow-Gチューニングはあえてその特徴を切り捨て、ミニギターのようになった楽器だといえるでしょう。

2つ目の違いは、楽器が鳴らせるノートの幅の違いです。
Low-Gチューニングで鳴らせる最も低いノートは4弦のG3です。
一方、High-Gチューニングでは最も低いノートは3弦のC4です。
高音側の1弦は変わりませんので、Low-Gチューニングの方が鳴らせるノートが低音側に5セミトーン多いことになります。
鳴らせる音の幅が広いことは表現の幅につながりますので、Low-Gチューニングはソロプレイを行う場合に良く用いられるのです。

3つ目の違いは、4弦のピッチがオクターブ違うことで、同じポジションで弾いたコードの構成音が変わってしまう場合があることです。
コードを弾くとき、コードを構成するノートのうち最もピッチが低いノートが、最もコードの印象に影響を及ぼします。
そのため、4弦が最も低いピッチになるLow-Gチューニングにすると、High-Gチューニングと同じポジションで押さえても、全く違う聞こえ方をする場合があります。
High-GチューニングとLow-GチューニングでGコードを弾く場合が特に顕著なので説明します。
High-GチューニングでGメジャーコードを弾く場合
4弦は開放のG4
3弦は2フレットのD4
2弦は3フレットのG4
1弦は2フレットのB4
となり低い側からD4・G4・B4の3つのノートが重なることが分かります。
Gメジャーコードなのに、最も低いノートがGではなくDとなっているため、Dらしさが強く聞こえます。
Low-GチューニングでGメジャーコードを弾く場合
4弦は開放のG3
3弦は2フレットのD4
2弦は3フレットのG4
1弦は2フレットのB4
となり低い側からG3・D4・G4・B4の4つのノートが重なることが分かります。
この場合、最も低いノートがGになっているため、Gらしさが強く聞こえます。
これはどちらがいい悪いという話ではありませんが、意識しておく必要があります。

■ウクレレ弦まとめ
以上のように、ウクレレのチューニングはどのタイプも本質的な違いはありませんが、4弦のピッチが1~3弦に対して高いか低いか2タイプあり、これはサウンドや弾き方に影響があるという様にまとめられます。


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