マーケティング志向が時代的に移り変わるという考え方に基づいて、産業革命から現在に至るまで、以下のように遷移していると考えられている。
①生産志向の時代 需要>供給
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②製品志向の時代 需要=供給
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③販売指向の時代 需要<供給
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④顧客志向の時代 機能的価値による需要創造
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⑤社会志向の時代 情緒的価値による需要創造
それぞれ順を追って説明する。
①生産志向の時代(需要>供給)
顧客ニーズが多様化しておらず、特定の商品に需要が集中するため、「需要>供給」という状況が続く。「モノをつくれば売れる」時代。
日本でも戦後、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が三種の神器と呼ばれ、大きな需要が発生した。
特定の商品に需要が集中しているときは、その商品を大量に生産できる仕組みづくりが重要であり、この仕組みをいち早く構築できた企業が競争を勝ち抜く。
②製品志向の時代(需要=供給)
生産志向の時代を経て、多くの企業が大量生産できるようになり、類似品が数多く登場することでおとずれる「需要=供給」という時代。
顧客が製品を比較検討して選ぶようになるため、企業側はより高性能・高機能・高品質な製品が必要だと考える。このような考え方を「製品志向(プロダクトアウト)」という。
日本の製造業にいまでも根づく「よいモノをつくれば売れる」という考え方。
③販売指向の時代(需要<供給)
多くの企業が高品質なモノを大量生産し続けると、次第にすべての顧客に高品質な製品が行き渡り「需要<供給」という状況になる。
しかし「より高性能・高機能・高品質」は時として高価格につながり、必ずしも顧客ニーズと一致しない。
その結果、売れ残りが発生し、企業は「モノをどうやって売るか」を考えはじめる(販売指向)。
④顧客志向の時代(機能的価値による需要創造)
販売志向は在庫をさばくことが目的となるため、企業の都合が優先されてしまい、購入後の顧客の満足度が下がるケースが増える。すると顧客は次の購入に慎重になり、ますますモノが売れなくなる。
そこで、顧客が求めるモノを提供していこうという考え方が生まれ、「顧客志向」「マーケット志向」や「マーケットイン」と呼ばれる。
顧客志向は、マーケティングの基本的な考え方として現在でも多くの企業が採用している。
⑤社会志向の時代(情緒的価値による需要創造)
多様なニーズをも満たす商品が開発される現代において、顧客は商品の機能性や品質だけでは満足できなくなってくる。
すると顧客は、商品開発の背景やつくり手の想いに共感できるか、購入や所有が自己表現や自己実現に結びつくか、その商品が社会に貢献しているか、などを重視するようになってくる。
このような顧客の精神的充足を満たすことまでを考えたマーケティングを「社会志向」(価値主導マーケティング)という。
出展:中野崇(2019)いちばんやさしいマーケティングの教本 株式会社インプレス
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